第63回教育版画コンクールの審査講評です。受賞者一覧はこちらから見れます。https://corp.ryukyushimpo.jp/news/posts/E5G200fT4・5歳児の部今年もたくさんの版遊びを楽しんだ作品が出品されました。 幼児の版遊びは遊びこむことで写る喜びを感じていき,自分なりの感覚として版の写りが分かるようになっていきます。どのくらいの量の絵の具をつけたらよいか,素材の上から手で押さえたり撫でたりして圧をかける時間等,しっかり写す作業のコツをつかめるようになってくるのです。 今回はその育ちが作品から伝わってくるもの,タイトルと作品がつながっていることを大切にしながら審査していきました。5歳児の入賞作品は素材の特徴を活かしながら表したいことを丁寧に作り上げていることがよくわかりました。4歳児の入賞作品は,ダイナミックな作品が多く,心と体を使って伸び伸びと版遊びを楽しんでいることが伝わってきました。全体の印象としては,版のそばに,イメージしたものを追加でクレヨンで描き足している作品もあり,幼児の表現として色々な表現方法を認めていることも素晴らしいと思いました。 共同作品では,園での経験を友達と振り返りながら楽しそうに取り組んでいる様子がイメージできる作品がありました。版の良さと友達と一緒に取り組む良さを意識してこれからも取り組んでほしいと思います。 課題としては、版の写りが弱く素材がきれいに写っていない作品がありました。絵の具の準備も幼児自ら行っているのであれば,そこに気付かせる援助が必要になってきます。また表したいものが画用紙や絵の具の色と合っているか教材の工夫が挙げられました。特に夜空や花火を題材にする際は,何色を選べば効果的か,絵の具の色が鮮やかに見える工夫を幼児と一緒に考えていくとよいでしょう。今後も幼児らしい素敵な作品に出会えることを楽しみにしています。 沖縄県造形教育連盟 幼稚園部 緑間 薫小学校の部1年生 1年生では、子どもたちの素直な表現や素材への関わりが随所に感じられる作品が見られました。一方で、ぺったん遊びの作品は思ったより少なく、版遊びの基礎となる「版から発想を広げ る」「形を見立てる」といった経験を、より丁寧に積み重ねる必要性も感じました。身近な素材を試し、その面白さに気付き、創り出す喜びを味わう時間を十分に確保し、教師が子どもの気付きや工夫を見取ることが大切です。失敗も含めた多様な経験が表現の幅を広げ、感性を育ててほしいと思います。また、「家でもやってみたい」など、次につながる活動として、素材との対話を楽しむ版画指導を期待したいです。 与那原東小学校 室根 広菜2年生 今回の審査会では、2年生の皆さんののびのびとした表現と、豊かな発想が光る素晴らしい作品が揃いました。 特に印象的だったのは、生活の中で体験したことや、感動した瞬間をテーマにした多様な作品です。子どもらしい自由な構図や、鮮やかな色の使い方が、見ていてとても楽しくなりました。 また、様々な版画の技法に積極的に挑戦している様子が見られました。野菜や葉っぱなどの自然物を使ったスタンプ, 紙版、ローラー、ステンシルといった多様な技法で、それぞれの場面を面白く表現していました。 細部にわたり、紙を切ったり、貼り重ねたりしながら最後まで丁寧に取り組んでいる作品からは、作品への強い思いが伝わってきました。これからも、感じたこと、見たことを大切に、表現する楽しさを味わってほしいです。 南風原小学校 玉城 恵3年生 3年生の作品は、白黒の版画や色彩豊かなカラー版画、紙版画、木版画とバリエーションが豊富で多様な表現が見られました。運動会や社会見学など学校行事で体験したことを題材にした作品が多く、表情や体の動きが生き生きと表現されていました。また、生き物とのふれ合いを題材にした作品や生き物から広がる世界をイメージした作品なども多く、楽しく審査することができました。 明るさや活力を感じるいろいろな色を使った作品からは、子どもたちが楽しんで作品作りをしている様子も伝わってきました。 一方で何を表現したかったのかが伝わりにくい作品や、同じような型を組み合わせた版、表情が乏しい作品、写りが薄かったりぼやけていたりした作品も見られました。 今後の取り組みとして、児童の思いに合った版づくりや色のバランスを考え、最後まで丁寧に仕上げながら表現することを楽しめるよう支援をして欲しいと思います。 北玉小学校 宮平 郁子4年生 今年の4年生の版画は単色木版画、彩色版画や多色刷り等、色彩豊かな作品が多く、サイズも多様で見ていて楽しい作品ばかりでした。初めて木版画に挑戦する児童が多いかと思いますが、人物の顔や手などが細かく丁寧に彫られていて粘り強く作品づくり向き合う児童の姿が見えました。また、独特で工夫された構図の作品や、画用紙やインクの黒をバランスよく上手に活用している作品も多々見られました。 改善点として、彫刻刀の特徴を活かした作品が少なかったように感じます。版を写した時の効果も合わせて指導されるとさらに表現が豊かになるかと思います。写真やイラストをトレースしたような作品も見られましたが表現活動としては弱さがあります。参考程度にとどめたいものです。 子どもらしく思いの詰まった作品は私たちの心を動かし自然と笑顔にさせてくれます。 普天間小学校 久場 公貴5年生 5年生は彫刻刀を使って版表現が2年目になることもあり、線彫りや面彫りを工夫して人物の表情や動きを丁寧に彫り込んでいました。特選・優秀賞の作品は、構図がしっかりとしていました。表現したい中心がはっきりとしており、人物の表情が生き生きと表せていました。また、彫刻刀の特長を生かして背景の丁寧さや体の細部の表現にも工夫が感じられました。 題材としては、家庭生活、学校行事、地域行事などで体験したことを表現した作品が多く、人物が重なる構図では手足や目の動きの表現を工夫していました。そうすることで、躍動感あふれる作品に仕上がっていました。 課題としては、時間的な問題からか十分構想を練らずに取り組み始めた作品、主題や「表現したい思い」が何なのか分かりづらい作品も見受けられました。また、刷りの段階で残念な結果になってしまった作品も見られました。 指導者と一緒になって頑張ってほしい点は、限られた時間の中で難しいと思いますが、各自が自分の個性を出せる作品になるように導入指導をすることです。表現したいテーマと構図が決まったら、過去の作品や図工科教科書などのを鑑賞してから彫りに入る指導を期待したいです。 次年度も素晴らしい作品に出会えることを楽しみにしています。 大里北小学校 森田 敏文6年生 6年生は彫刻刀を使っての版表現に慣れていることもあり、線彫りや面彫りを工夫して、人物の表情や動きを丁寧に彫り込んでいるのが印象的でした。 テーマも運動会等の学校行事や好きなスポーツを頑張っている姿、また抽象画的な多色版表現もありました。 特選・優秀賞の作品では、白と黒のバランスをよく考えた作品や、人物と背景の効果を考えた構図、彫刻刀の特徴を生かした彫りの工夫やムラのない刷りなど、丁寧な作品も多く見られました。 課題としては、時間的な制約からか安易に多色版画や市販のステンシル版画にとびつき、構図や刷りで残念な結果になってしまったり、主題や「表現したい思い」が何なのかよく分からない作品も見受けられます。 題材決め・下絵・彫り・刷りの工程を楽しみながら表現するのが版表現。子供の表現したい思いを引き出し、子供の主体的な表現活動になるように導入段階から個々に寄り添った指導をお願いいたします。 喜名小学校 豊田 達雄 中学・高校の部 中学校の部では、一版多色刷りやドライポイントといった多彩な技法に挑戦し、カラフルで自由な発想に富む作品が多く見られた。これは、版画表現の可能性を積極的に広げようとする、素晴らしい意欲の表れだ。同時に、モノクロの木版画が持つ、素材の力強さやコントラストの魅力も探求することで、表現の幅はさらに広がるだろう。 テーマの選定においては、中高ともに、自身の実生活に深く根付いたテーマを選ぶことが、作品に真の個性を生み出す鍵となる。周りの表現に影響されるのではなく、主題を自身で写真に収めるなどして、構図を練る過程を大切にすることが、オリジナリティと強い説得力を作品に与える。 高校の部については、前回より少なかったシルクスクリーンのような基本技術の向上に直結する版種への挑戦を期待する。版画の奥深い世界を探求するため、ぜひ、基礎を固める版種にも積極的に取り組み、表現力を磨き上げてほしい。 豊見城中学校 前川 留美特別支援学校の部 本年度の特別支援の部には、小学校・中学校の特別支援学級、特別支援学校から 1,497点 の応募がありました。限られた時間での制作となり、完成度に課題の残る作品も見受けられましたが、出品作品からは構図の工夫や彫りの力強さ、刷りの濃淡や重ね刷りによる表現など、版画ならではの魅力が感じられました。 上位入賞作品は、先生方のご指導を受けながら、線の勢いを生かした表現や独自の配色を意識した刷りの工夫など、児童生徒の感性を存分に発揮し、独自性あふれる作品に仕上げられています。版画の持つ「彫る」「刷る」という行為そのものを楽しみながら挑戦した姿勢が伝わり、特別支援の部ならではの豊かな表現が広がっていました。 児童生徒一人ひとりの努力と創造性が刻まれた今回の作品群から、今後のさらなる成長を大いに期待いたします。 那覇みらい支援学校 下地 敦